お菓子作りに欠かせないバター。
バターは、お菓子にコクや芳醇な香りを与えるだけでなく、様々な働きがあります。
この記事ではバターの3つの特性を解説します。
バターの性質
可塑(かそ)性
可塑性とは、外から加えられた力によって、粘土のように自由に形が変えられる性質のこと。折りこみパイのように層状にしたり、バタークリームのように絞り出したりできる性質のことです。
バターは一見均一な塊に見えますが、実は「液状脂」と「固体脂」が混じりあった状態で、温度によってその比率が変化します。油脂全体に対する固体脂の割合が15~25%の時、固体油脂は「可塑性」のある、伸びの良い状態になります。バターの場合、この状態になるのは温度が13~18度と比較的狭い範囲です。
中国のパイ生地に用いられる「ラード(豚脂)」は、可塑性を示す温度範囲が10~25度と広いため、バターよりも室温での取り扱いが楽になります。
ショートニング性
油脂が、小麦粉の生地の中でグルテンの形成を阻害しサクサクと軽い状態に仕上げる性質のこと。
クッキーや練りこみパイ生地(パートブリゼ)などがこの性質を生かしたお菓子です。
グルテンとは、小麦粉のたんぱく質が水分を吸ってつながり、網目状の骨格をしたものですが、このつながっていく過程を、膜状に広がったバターが阻止します。この優れたショートニング性を発揮するのは、バターの温度が粘度のように形を変えられる状態、つまり可塑性を持つ時で、13~18度の範囲です。固形のバターにもショートニング性はあるため、サブラージュ法で作るクッキーやブリゼもサクサクになります。
ちなみに、ショートニングとは「サクサクさせる、ぽろぽろにする」という意味を持つ植物性の油脂や、動物性の油脂を原料とした無味無臭の白色の油脂です。19世紀、アメリカでラードの代用として開発されました。
マーガリンと違うのは、マーガリンは15%前後水分を含んでいるのに対し、ショートニングは0.5%以下の水分しか含んでいないこと。
その名の通り、ショートニング性に優れているのはもちろんだが、可塑性を示す温度範囲も調整できる。
クリーミング性
固形油脂を攪拌したとき、中に大量の空気を混ぜ込むことのできる性質のこと。
バターと砂糖を白っぽくなるまで空気を充分に含ませることで、オーブンの中で、水蒸気や炭酸ガスが、生地の中の気泡を核として大きく膨らんでいきます。これによって、バターケーキがふっくらきめ細かく仕上がります。バターケーキの生地や、バタークリームにこの性質が生かされています。
適正な温度は、指で押して跡がつくくらい(ポマード状)の20~23℃です。
固形油脂でも、結晶の並び方が違うと、クリーミング性がないものもあります。
液体で使うバター
バターが溶けて液体になってしまうと、可塑性、ショートニング性、クリーミング性を作っていた結晶の状態が崩壊してしまうので、手作業ではもとに戻りません。液体のバターを入れる理由は、バターの風味としっとりした食感を与えるためです。マドレーヌやフィナンシェに使われます。
バターを溶かすと、油脂よりも重い水分の15%ほどのバターミルクが下に沈みます。バターミルクは、乳糖や乳たんぱく、脂肪球膜の1部などが含まれているので白く濁って見えます。
上の黄色く透き通った部分は、澄ましバターと呼ばれています。澄ましバターは、焦げ色のもとになるものが含まれていないため、焦がしたくないお菓子や料理に使われます。
まとめ
バターの3つの特性
①可塑性
②ショートニング性
③クリーミング性
溶かしてしまうと、もとに戻らないので注意!
バターの特性を生かすためには、温度がとても重要です。材料の特性を理解して、お菓子作りをより楽しんでください。
この記事を書いた人
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プロが教える本格お菓子教室「シュクルエピス」主宰。
東京都北区の自宅工房でお菓子教室とお菓子の販売をしています。
「日常にスイーツとちょっとしたスパイスを」をコンセプトに、美味しさと完成度にこだわったお菓子をお届けしています。